2018年01月27日

トイレの誰子ちゃん・前編

 小さめの男性用トイレに入る。奥に個室が一つ、真ん中に小用が一つ、手前に鏡と洗面台。

 個室の扉が閉まっているから、このトイレには人間が二人。

 のはずなんだけど、洗面台の方からも音がする。

 ホテルのトイレだからね。高級っぽい硬質素材で囲まれた狭い空間。個室の人がわりと賑やかに作業してるから、それが簡単に反響して、そんな風に聞こえる。そうだ、そうに違いない。何でもない何でもない落ち着け落ち着けと言い聞かせるほどに手元が震えてうわしまった何らかの液体が不都合な飛び散り方をおのれ一人ならこんなことにはならなかったのに個室の奴めこうなったらこの止まぬ飛び散りをそっちに向けてやれわはははは。

 ……何だっけ。

 あ、そうそう。反響ね。

 反響とか反射とか、何となく顔に見える模様とか。

 「おや、誰かいるのかな」というようなふとした気分。そういうちょっとした思いに敏感に反応して、シュッと入り込むものもある。話しかけられすぎたぬいぐるみとか、必要とされすぎた人形とかね。

 「パパ! ベッドの下に誰かいるよ!」
 「大丈夫だジョージ、パパの下にいるのはママだよ」
 「それは知ってるよパパ、そうじゃなくってベッドの下に」
 「何だ知ってるのかジョージ、だったらなおのこと早く寝なさい」

 バタン。ギシギシ、ギシギシ。

 「ジョージ! このギシギシは廊下が古くてパパが歩くと」

 駄目だパパは分かってくれないけどママじゃない人がいるよりはずっとマシだこんなご時世だものそうじゃない間違えたええっと何だっけそうそう、ふざけてたら思ったより長くなったから明日につづく
posted by 篠田 青 at 00:24| Comment(0) | 精神世界
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