2018年04月06日

地獄の一丁目

 むかーしむかし、あるところに。心の綺麗な、何とも素直な娘さんがおったそうな。

 ある日のこと。霊能者や占い師なんかに言われたことを、彼氏に話してみた。

 すると彼氏はすぐに、大きな声で

「そんなこと、誰にでも言えるんだよ!」

 と怒鳴り始めた。

「誰にでも当てはまるようなことを言って、あとは反応を見ながら合わせてるだけなのに、そんなことも分からないのか! だからお前は駄目なんだ。そんな奴に使う時間があるなら、キャバクラで働け。同じ時間で金が増えるんだぞ。そしたら俺と旅行にだって行けるようになる。二人で幸せになりたくないのか。俺一人が頑張ったって駄目なんだよ、お前の協力があって初めて、二人の幸せに繋がるんだ」

 そう言われて娘は、ああそうだ、彼氏の言う通りだ、自分は本当に駄目な人間だと気づくことができました。二人の幸せを考えて、こんな駄目な自分のことを真剣に怒ってくれる彼氏と旅行をしたいと、心から思ったのです。

 喜びで涙を流しながら、娘はすぐにスマートフォンを手に取りました。思い立ったが吉日、キャバクラの面接もすぐに決まりました。心配だった洋服も、彼氏が知り合いから借りてくれるそうです。それも今すぐ!

「今日はお前の記念日だ。祝杯もあげないとな。ガソリン入れてくから、チューハイの分、ちょっと出しといてくれるか?」

 彼氏の背中を見送った娘は、これからはどんなことでも二人で乗り越えていけそうだ、という気持ちでいっぱいでした。二人の絆を証明するためなら、キャバクラなんてちっとも怖くありません。もっともっと凄いことだってできそうです。

 めでたし、めでたし。
posted by 篠田 青 at 13:22| Comment(0) | 精神世界